本シリーズ最終章。
今号では、建築家の樋田和彦先生に、城南エリアでもニーズが高い、資産有効活用としてのオーナー住宅付き賃貸マンションの設計でのこだわりをお伺いしました。
一戸建てではありませんが私は、地主さんからオーダーを受け、資産有効活用を目的とする賃貸マンションやアパートの注文建築の仕事にも携わっています。
今回、ご紹介するのは、世田谷区下馬の1~4階までが賃貸マンションで、5階がオーナー宅という建物です。
オーナー様は、ご夫婦お2人。
ご要望は、放送関係の方ということもあって、きちんとしたオーディオルームと、他にはLDKと主寝室、来客用の和室2室を欲しいというものでした。
ご自宅の空間よりも、マンションとしてどういうものをつくれるのかと、その資産価値にご関心をお持ちだったので、「10年後も隣の新築マンションと同じ家賃を維持できる建物」をコンセプトとしました。
▲和室
▲ラウンジ
そのため、外壁、タイルなどの素材にセレクトしたのは、古くなって汚れても、逆にそれが風合いとして感じられるようなタイプのものです。さらに、独自性もご提案したいと思い、エントランスは円形で石畳を敷き、あまりエントランスらしくないデザインにしました。
また、建物の中に地下1階までの吹き抜けを設け、全住戸から共用のエレベーターまでのアプローチに吹き抜けにかかるブリッジを設置。家から出かけるときも、逆に家へ帰るときも、住人はブリッジを渡りながら、ON&OFFの気分転換をしていただくという発想です。
さらに、その共用スペースから見えるのは空だけで、隣の建物は一切見えません。
ひとつの街のような演出をし、それを「都市洞窟」と名付けました。
一方、外観のコンセプトは、新宿の高層ビル街。当初は、色の明暗を変えようかとも考えたのですが、最終的には、単色でビルがいくつも重なって見えるような外観に仕上げました。
賃貸マンションやアパートは、新築のときには部屋が埋まっていたのに、2~3年経ったら空室率が高くなった、さらには10年、20年したら誰も入らないということが生じないように気をつけなければなりません。
このマンションは、築15年くらいですが、「家賃を下げなくても、空いたらすぐに次の入居者が決まる」と、オーナー様も喜んでくれています。
賃貸マンションのコンセプトが資産価値を維持できる建物だとするなら、一戸建て住宅も、せっかく家を建てたけれども10年後には住みづらくなって買い換えや大々的なリフォームが必要になった・・・などが生じないようにしたいものです。
そのためには、連載1、2回でもお話しましたが、クライアント様はある一時期の家族構成にあわせた間取りや部屋数、畳数ばかりを気にするのではなく、まず、家に対するご要望や理想の住まわれ方をお話いただく。
そのイメージを共有しながら、「わたしが住みたい住宅をあなたのために」ご提案させていただきます。
◇ ◇ ◇
みなさんも土地情報をご覧になって是非、注文建築をご検討下さい。
▲LDK
掲載日:2010年7月31日