住まい手とつくり手とのコーディネーター役となって、三位一体で「家族が帰りたくなる家づくり」に取り組む、建築家の前真吾先生。
今号では、港区南青山と世田谷区祖師谷の2邸のプランを通して、先生の家づくりへのこだわりを語っていただきました。
一戸建て住宅をご購入される方の多くは、フレームの中に部屋を区切る集合住宅では得られない、豊かな通風や採光を家に求めます。
そこに、小さな庭などの四季が感じられる自然や植物が加われば、家の全体像が変わり、「帰りたくなる家」に近づきます。
南青山のK邸は、家の目の前が大きな芝生の公園という恵まれたロケーションで、それを最大限に活かしたいというのがお客様のご希望でした。
そこで、2階に配したリビングダイニングの公園側にバルコニーを設け、室内の壁を外まで延長し、公園の風景が切り取って見える設計にしました。
K様一家は、ご夫婦と男の子と女の子の4人家族です。
お子様のいるご家族に、よくご提案するのは、「ぐるぐる回れる家」。
2階のリビングから階段で3階に昇ると、女の子の部屋があり、隣は男の子の部屋。
二つのお部屋の出入り口とは別にもう一つのドアをつくることでお互いの部屋を自由に行き来できるようになっています。
リビングにはもう一箇所別の階段がありキャットウォークを通っても、男の子の部屋にいけるようになっていて、ぐるぐると回れることにより、お子様が小さい頃はリビングと子供部屋が一方通行ではなく双方向に繋がっているので家族とのコミュニケーションがより多く生まれるようにしました。
成長に合わせ女の子の部屋からは鍵をかけられるようになっているので、その時はキャットウォークと階段が男の子の専用スペースになるので喜んでいます。
もう一つの特長は、1階の主寝室と書斎の下に設けた18畳くらいの地下収納。
天井高が1.4mなので、建築基準法ではロフト同様、容積率には含まれません。
スペースをフルに活用して4層住宅ができあがりました。
K様との打ち合わせは前居にお伺いして、毎回、お子様も交えて打ち合わせをし、建具や壁紙にはお子様の意見も反映。
ご入居後に、「本当に頼んでよかった」と言われたときには感無量でした。
▲室内の壁を外まで延長し、公園の風景だけが見える設計にした外観
▲公園を望むリビング。
左手奥にはキャットウォークに続くストリップ階段
▲ルーフバルコニーから2階バルコニーの眺め
▲お子さまに人気の走り回れるキャットウォーク
一方、木造2階建ての世田谷区祖師谷のA邸も、容積率に含まれない天井高1.4m、約8畳の地下収納と、2階の上に約10畳のロフトを設けることで4層構造となりました。
家正面の外観にも、小窓しかないという特長があります。
私は、個人的には、西日よりも東の光を取り込むプランが好きなのですが、A様も同じ考えだったので、閉じるところは閉じ、その代わり中庭からすべての部屋に風と光が取り入れられる設計にしました。
1階リビングの天井高を2.9mにしたことで、2階のフリールームと主寝室がスキップフロアになったのですが、こちらもお子様が自室のある2階フロアの中庭の周りを、階段も使ってぐるぐる回って遊んでいます。
A様も、お子様を交えて、私共の事務所で打ち合わせをしました。
奥様はパース等を見ても、外観のイメージが浮かばなかったようですが、完成後、「外観も、家の中の通風や採光も、予想以上」と、喜んでいただけました。
どちらも、お客様とフィーリングがあい、ファーストプランを深めていく形でしたが、ご要望が具現化でき、結果にご満足いただけたときが何よりもの喜びですね。
▲東の光を取り込み、プライバシーを保護する造りの外観正面
▲家の内側に組み込まれたデッキスペース
▲キッチンから見渡す天井高2.9mのリビング。
奥はデッキスペースに続く
▲全ての部屋に面した中庭
掲載日:2009年9月23日