建築家からのメッセージ 第1弾 伊原孝則 Vol.2

建築家からのメッセージ

  • バックナンバー
  • 樋田 和彦 Vol.3
  • 樋田 和彦 Vol.2
  • 樋田 和彦 Vol.1
  • 阿久津 雄一郎 Vol.3
  • 阿久津 雄一郎 Vol.2
  • 阿久津 雄一郎 Vol.1
  • 河崎 和浩 Vol.3
  • 河崎 和浩 Vol.2
  • 河崎 和浩 Vol.1

「自分らしい家が一番です」個々のニーズに応えるフロア、窓、構造の家々

伊原孝則 - Profile -

伊原孝則

伊原 孝則 -Takanori Ihara-
「家は住む人の哲学----それぞれの生活や身体感覚にあった家づくり」をモットーとする建築家・伊原孝則先生からのメッセージをお届けするシリーズ第2弾。
前号でモデルケースとしてご紹介した、先生が設計された3邸について、今号では、細部のこだわりのいくつかを見ていくことにしましょう。

FEDL(ファーイースト・デザイン・ラボ)
港区麻布台2-2-12-6BC / tel,03-3585-5573
伊原孝則 ホームページ
新しいウインドウで開きますhttp://fedl.jp

柱がない&斜めなどのユニーク構造にも対応

前号で、「自分らしい家」がベストというメッセージをお届けしましたが、たとえばリビング。
ワンルームタイプのリビングに、家族全員が集まるスタイルが好きな方もいれば、逆に、プライバシーが守れないことで快適に感じない方もいらっしゃいます。

ご夫婦とお子様二人のAさん宅では、上階へ続く階段があるリビングが一番低く、その上にダイニング、さらに上にキッチンと奥にパソコンコーナーという、高さが違うスキップフロアを採用。

それにより、家族各々が好きな場所で、食事やテレビを見る、パソコンに向かう、読書などの別々の行動をしながらもどこかでつながっている空間が実現しました。

そのダイニングは東向き。家族全員が集まる時間が、朝食のときだけだとお聞きしたので、朝日が差し込んで気持ちがよいのだけれども、夏は少し暑く冬はやや寒い、非日常感とまではいきませんが、家族の長い間の記憶に残るような場所にあえて配しました。
大きな窓に備えたダブルのロールスクリーンは、締めると光る壁となります。(右メイン写真)

窓と言えば、Cさん宅は、南側がかなり車の音がうるさい道路に面していたため、窓ではなくスリットを設け、そこから光が入る設計にしました。

ご両親と娘さんご夫婦と愛犬2匹で暮らすCさん一家は、ハーモニカ職人のお父様の工房や娘さんのコスメティックサロン、お母様がガーデニングを楽しめるデッキが欲しいなどのご要望があったため、それら全てを叶えるため、こちらは3,5層に全部で8フロアをスキップ。
愛犬の落下防止に、可動式の建具も備えました。

柱がない&斜めなどのユニーク構造にも対応

平剛風アトリエ TAIRA TAKESHI ATELIER Bさん宅

家族流で過ごせるスキップリビング空間

先ほどご紹介したAさん宅のスキップフロアには、実は、柱が一本もありません。スチールで組んだ棚を強固な耐震壁として活用しました。大黒柱ならぬ、大黒棚です。

一方、Bさん宅の内装の壁には、スチールのプレートを使用し、斜めの柱を立てて、大きな空間を作りました。
一見、寒そうな家に見えますが、「土壌蓄熱床暖房」という設備を備え、床自体が輻射熱でオイルパネルヒーターのようにフワッと温かくなるように工夫しました。スチールなので結露が心配でしたが、居住後、2年たった今も、結露はまったくないと聞いています。

夏は、天井が高いので暖かい空気が全部上にあがり、高い位置に付けた換気扇から排出されるため、ほとんどエアコンは不要。エコ住宅とも言えます。

何点かご紹介したように、お客様のご要望と現代生活にあう家を考えた結果、極端な設計になることも多々あります。
そういうときも格好よさばかり追究するのではなく、ユニークな設計を最大限に活かし、普通では味わえない快適さが体感できるような家づくりを心がけています。
住まう方々には、その住み心地を存分に満喫していただきたいですね。