建築家からのメッセージ 第1弾 伊原孝則 Vol.1

建築家からのメッセージ

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「家は住む人の哲学です」住む人の生活や身体感覚にあった家づくり

伊原孝則 - Profile -

伊原孝則

伊原 孝則 -Takanori Ihara-
一生で、最も大きな買物ともいえる「家」。
購入を考えている方は、これから始まる家族の新しい物語に、胸を弾ませていることでしょう。一方、建築家は、住まう方々に思いを巡らせながら、匠の技を発揮。創り手から住まい手へ―今号から数回にわたり、建築家・伊原孝則先生からのメッセージをお届けします。

FEDL(ファーイースト・デザイン・ラボ)
港区麻布台2-2-12-6BC / tel,03-3585-5573
伊原孝則 ホームページ
新しいウインドウで開きますhttp://fedl.jp

個々の家族で異なる家への要望&思い

私どものオフィスでは、住宅を中心に、店舗や動物病院、内装から、プロダクトやグラフィックデザインにいたるまで、単に格好よいだけではなく、生活に根ざした現実的なデザインのご提案をさせていただいております。

メインワークである住宅にもいろいろな形態があるのですが、その一つの注文住宅の場合、クライアント様ごとで異なる家族構成やライフスタイル、ご要望や思いをお聞きしながらスタディを重ね、「個々の個性が建物に現れる」ことを重要に考えています。

以前、設計をした杉並区のAさん一家は、仕事をもつご両親と、私学に通うお子様二人の忙しい家族でした。設計でめざしたのは、それぞれがプライバシーを保ちつつ、どこかでつながっていることと、気持ちよいと感じる居場所がたくさんあること。

寝る時間が別々のご夫婦の寝室は、簡単な家具を介して別室にし、子ども部屋から続くロフトは一部をつなげ、ベランダはひと続きに、LDKはステップフロアにするなどの工夫をしました。

また、三十代前半のBさんご夫婦はお父様から譲り受けた平塚市の100坪の土地で、おふたり共通の趣味の音楽ができる部屋がある、のびのびと暮らせる平屋の家が欲しいというご希望でした。
開放感のある天井高の平屋にし、音楽室は離れで設置。ほとんどの部屋が庭に面し、玄関前にも、隣の親戚宅と共有できる大きな庭を設けました。

巣鴨の、ご両親と娘さんご夫婦、そして犬2匹で暮らすCさん一家は、ご要望の一つが、車3台を停める場所が欲しいというものでした。
ガレージやピロティをつくるプランもご提案しましたが、最終的には、1階部分の面積を狭くする設計で、駐車スペースを確保。ユニークな外観デザインとなりました。(右メイン写真)

ユニークな外観デザイン

TAIRA TAKESHI ATELIER Aさん宅

家は、住む人の哲学。自分らしい家がベスト

3邸の大きな特長をご紹介しましたが、ケースバイケースだということがおわかりいただけたのではないでしょうか?

少し大げさな言い方かもしれませんが、私は、家は住む人たちの哲学、生活の考え方みたいなものが、そのまま形になったものだと思っています。それ以上でも、以下でも駄目。過不足のない形で、住む人の生活や身体感覚にピッタリあった家が、いちばんよいと思うのです。

今まで生活をしてきた経験から「うちの家族構成なら4LDK」だとか、雑誌などを見て、「自分だけの小さな書斎を欲しい」と、おっしゃられる方がいますが、本来、個々でニーズが違って当然なのですから、いったん自分を解放し、本当に必要なものは何なのかを考えてみるとよいでしょう。

「どんな家がよいですか?」という、よくある問いに対して、一つだけ言える答えは、「あなたらしい家」。自分らしい家なら、よりオリジナリティの高い生活ができると思いますよ。